日本で働いていたときにはよく、こんなことやってるのは日本だけ。とか外国ではこうらしいよ、というフレーズをよく聞いてきました。ほんとにそんなに外国がいいのか。日本はダメなのか。自分が異国の地に立ち、実際どうなのか。患者として、医療通訳としてという2つの立場からこの国の医療に触れることで見えてきた様々なことをここで皆さんと共有できれば嬉しく思います。

カナダの医療制度

今回はカナダの医療制度についてご紹介したいと思います。日本と異なるのは、患者の医療費はすべて国が負担するという点です。こちらにいるとよくアメリカの方に、カナダはいいよ、税金高くても医療費がタダなんだから。と言われます。メディケアと呼ばれる国民皆保険があり、カナダ国民(私のような移民も含む)は日本でいう国民健康保険に入ることができます。これにより通院も入院も医療費はすべて無料、手術も検査も一切費用はかかりません。ただ、眼科、歯科の診療、お薬代は適応外となり100%自己負担になります。ちなみに中国系の移民が40%を占めるバンクーバーではチャイニーズドクターと呼ばれる漢方医も多いのですが、ほとんどが中国などで医師免許がありこちらに移民してきた方で、カナダ国内での医師免許を持たずに診察・処方しているため、現状では国の定める医療の概念の中には入っていないことになります。

これに加えて企業の従業員や公務員の方は国保がカバーしない医療費を負担してくれるエクステンドメディカルという保険が福利厚生の一つとしてあります。この場合患者さんはいったん費用を支払い、後日被保険者が直接保険会社にレシートを送付し、費用を申請します。

ファミリードクターの存在

じゃあ、まず病気になったらカナダの人はどうするのか。外国ではかかりつけ医がいるという話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、カナダでも病気になるとまず最初にファミリードクターのところへ行きます。これは実際かなり楽で、日本みたいにこの症状なら何科に行けばいいのかなー、なんて考えずに病院に行こう、と思ったら自分のファミリードクターに直行すればいいんです。日本でもかかりつけ医を持とうという動きがありますが、カナダではファミリードクターは患者の保険番号と照合され、ばっちりあなたのファミリードクターはこの人です、と決められています。ファミリードクターの診察次第で、じゃあ今回は検査が要るとなったらラボ(臨床検査場)へ行きますし、専門医の診察が別途必要な場合はその後専門医を受診することになります。その他、カウンセリングやフィジオセラピーなどもファミリードクターから指示書を発行してもらうことで予約が取れます。

平日に調子が悪くなったらファミリードクター直行でOKなのですが、夜間や週末の場合はどうするか。この場合はもう救急病院に行くしかないんです。最近では土日もやっているクリニックも増えつつありますが、ほとんどの場合は急患としてERと呼ばれる時間外の総合病院に行きます。私が医療通訳を主に担当していたのはERの患者さんでした。これについてはまた別の回に詳しくお話したいと思っています。

医療費は税金でまかなわれるため、医療費は常に最低限に抑えるというのが大前提にあります。日本では適応外となる出産にかかる費用も無料ですが、経験談をお話しすると超音波は妊娠がわかってから出産するまでに2回のみ。出産後は24時間以内に退院、とこれだけでも日本とは大きく異なることを感じていただけるのではないでしょうか。余談ですが私が出産したその日の病院食はラザニアでした。改めて自分が異国にいるんだなと感じました。

問題点

日本でも医療の問題点は様々なものがありますが、これは諸国尽きないのかなと感じます。カナダも例にもれず、良い面とそうでない面があります。カナダでも医師・看護師の医療従事者が不足しています。バンクーバーでもファミリードクターは大半が患者さんを限界まで抱えており、患者さんが新規にファミリードクターを見つけるのには困難を極めます。ファミリードクターを持たない方でもウォークインクリニックと呼ばれる診療所で医療を受けることができますが、待ち時間が長く混雑していることがほとんどです。一方で薬剤師は飽和状態にあるため都市部では求人が少なく、経験の少ない薬剤師は郊外で仕事を見つけることのほうが圧倒的に多いのが現状です。

もう一つの大きな問題点は、すぐに命に関わらない手術や診察に途方もない時間がかかることです。診療科目によっては医師の数が少ないため、カナダで専門医を受診する際の予約は半年~一年以上待つこともあります。また緊急性の低い手術なども同様、かなりの時間待たされるため、アメリカに行って治療を受けたり、カナダ国内の民間の病院に行ったりする人もいます。この場合はどちらも医療費はすべて自己負担となります。医療費を少しでも抑える為、設備も医療従事者も最低限。日本であれば一日で住むことがカナダでは一年以上かかることもあります。

次回はもう少しカナダの薬剤師さんにスポットライトをあててお話をしていきます。